祈る人-完全版-
」のレビュー

祈る人-完全版-

深井結己

祈る人と伴奏者

ネタバレ
2021年8月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ かつての太っ腹企画、麗人記念発展期にてこちらの1話分を読みました。あの1話だけでお話は完結してるのかと思ってましたが、この完全版を読むとあれは序盤だったんですね。かなり長丁場なお話でした(278P)。
高校卒業前に告白してから結ばれた滝野と深町。卒業後、滝野は地元で就職し深町は東京の大学へ。いきなり遠距離になりますが会えば身体を重ねて愛を確かめ合います。が、何故か深町の姉ちゃんが2人のHを見せろと脅したり滝野の母親登場で滝野の切ない過去を知ったり、なかなかなドラマがありました。他にも大なり小なり色々な事が起こるのですが、ラストに2人の想いが試される場面が1番の見せ場だったかなと。
滝野は望んでも叶わない現実に何度も打ちひしがれた過去があるため諦め癖がついてるのですが、実はずっと純粋に祈りを捧げていた人でもあったんです。ですが、もはや願う事すらしない方がいいとさえ思っている滝野に対し、深町は願うだけじゃなく行動しなきゃ意味がないんだよ、僕がそばにいるからねと何度となく滝野に伝えます。その姿がまるで滝野の手を引く伴奏者のようでもありまして。滝野が諦めかけたかに思えた時に深町が愛を叫ぶシーン、深町の背にうっすら描かれたものを見てマーガレット・パワーズの「あしあと」という詩が思い浮かびました。タイトルが「祈る人」なのも何故か腑に落ち感動すら覚えます。
この作品、これまでの深井作品とはちょっと趣が異なるかもですが、先生の根底にあるものを知れてまじ僥倖です!あー、ほんとジワジワくる作品でした。
※他短編1話入っています。そちらはSFですが本編で気持ち持ってかれてしまったので内容は割愛wすみません。
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