耳鳴りとめまいと悪寒について【SS付き電子限定版】
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耳鳴りとめまいと悪寒について【SS付き電子限定版】

湖水きよ

誰も取らないその手を伸ばして触れた相手

ネタバレ
2021年8月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 親の遺した古本屋と借金を受け継ぐ神代真名の店に借金取りの赤羽根亮がいる時に、失せ物探しの依頼人がやって来ます。見事探し当てた真名は赤羽根にそのトリック(推理)を種明かししますが、その後酔った真名は置き去りにされた子供のいるマンションの部屋を言い当てます。真名には、他人や物の、誰かを呼ぶ声と、それに応える声が聞こえてしまうのでした。
赤羽根は真名に自分の母親を探して欲しいと頼みます。その過程で、赤羽根の生い立ちが明らかになってきます。ヤクザに近い金貸の赤羽根と真名には、誰からも欲しがられないという幼児期からの強烈なトラウマが共通していたのでした。
作品中でタイトルの回収は無いのですが、耳鳴り、めまい、悪寒、いずれもバグった症状であり、誰とも繋がれなかった主人公達はバグのような存在と考えられます。もしくはそんな二人が繋がれたことがバグなのかもしれません。
誰にも苗字では無く名前を呼ばれることのなかった二人が、お互いの名前を呼び合うになるまでのお話です。
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