ボーイミーツマリア
」のレビュー

ボーイミーツマリア

PEYO

沢山の方の目に留まりますように。

ネタバレ
2021年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ ずっと、ずっと購入するか悩み抜いた作品です。だけど、読み終えた今、読んで良かったと心の底から思います。
親のエゴで、生まれて来た性別を否定されながら、大人の期待を裏切らないようにするしか道がなかった有馬。そのエゴが招いたとは言わないけれど、一生心に残る傷を負わされた悲劇に、目を覆いたくなりました。嘆く母親の前で、髪を切る事が背一杯の抵抗だったと思うと、やはり辛いです。
決して、性別を間違えて生まれて来たのではないし、自分を中途半端な人間だと思わないで欲しい。自分は男なのか、女なのか、一体自分は何者であるのか、傷つけられた心にもがき苦しむ有馬にどう寄り添えばいいのだろう…理解しようとしても、その苦しみは彼にしかわからないだろうし、理解しようとするのではなく、心を寄り添って受け止める事なのかなと。人と同じでなければ、異端児のようで、周りの戸惑いもわかる気がしますが、大河のように男女のこだわりを越えて、有馬という一人の人間に寄り添って来た強さはやっぱりヒーローなんだな。ヒーローになりたかった幼い大河にも、親の不仲や母親との別れに傷ついて来たけれど、有馬と出会って強く優しくなれた気がします。「優でいてくれたら」と言う言葉に有馬は救われたのではないでしょうか。もう涙が溢れてたまりません。
物語の中で伏線が張られていて、それが見事回収された時、やっぱりヒーローは居たんだなと、感動の一瞬でした。
この素晴らしい作品が、遺作であると知った驚きは言葉になりませんでした。さぞやご無念であったかと思うと、作品の中から訴えかけるもの、これは多くの方に読んで欲しいと強く思います。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

この作品を悩み抜いて購入した訳は、児童に対する性的暴行のシーンがあると知ったからです。自分に耐えられるのか不安で仕方ありませんでした。辛い事ではありますが、作品を読み終えて言える事は、読んで良かったと思います。
地雷に関する注意書きは、作品選びにおいてとても有難いものであり、その勇気に感謝したいと思います。フォロー様方、フォロアー様方も読まれる時の辛さを、お察しいたします。ありがとうございました。
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