ニューヨーク・ニューヨーク
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ニューヨーク・ニューヨーク

羅川真里茂

名言と名場面の宝庫でした

ネタバレ
2021年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「僕から君へ」で心鷲掴みにされた作者様が描く本格BL、いや本格ヒューマンドラマです。BL枠ですが全方位の方に向けて全力でおすすめしたいと思うほど心に響いて考えさせられる作品でした。
舞台は80〜90年代のニューヨーク、クローゼットゲイの警官ケインと訳あり青年メルの物語。クローゼットゆえの苦悩やゲイへの社会的差別や中傷・迫害、家族へのカミングアウトや息子がゲイだと知った母親の心境、はたまたエイズや養子問題と幅広く赤裸々にリアリティを持って描かれていて、読みながらしんどくなる事も多々ありますが数々の名言や心に残る名場面のオンパレードで胸にくるものがありました。
多分、誰もが心に引っかかって棘のようにジクジク痛む場面があると思うのですが、私は近所のシャーリーおばさんが経験した幼少時代のエピソードやエイズを貰ってしまった留学生、メルの隠したかった過去の告白シーンに、こういう経験をした人があたかもいたのではないかとさえ思うほどリアルに迫ってくるものがあって本当に心が痛かったです。さらに言えば、幸せを掴んだ矢先の凄惨な事件に生きた心地がしないのですが、その加害者や関係者さえもアメリカの隠部のようで目を背けられませんでした。
もちろん辛い事ばかりでなく、個人的には2巻で養子となったエリカの存在には凄く救われました。2人がエリカを愛している場面にジーンときて、エリカが新聞記者希望の男の子に堂々と言い切った場面にまたもやジーンときて。そこからラストに向けてはもう涙なしでは読めなくて、読後は放心状態になりしばらく使い物にならないくらい感動したのを覚えています。
今ちょうどセールになっている(8/16まで)ので、セール前になんとかレビューをと思い勢いに任せて書き殴りました。重いテーマを扱っていますが、よかったらこの機会に是非お手に取ってみて下さい。本当に素晴らしい作品、心に残る名作でした!
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