触らないで、抱きしめて
」のレビュー

触らないで、抱きしめて

重い題材をヘビーにさせ過ぎない手腕に脱帽

2021年8月21日
紅先生の作品購入は「片思いは最悪」に続き2作目です。こちらの作品は発売当初からとてもレビューが良くて読むのを楽しみにしていました。上下巻ともに全7話+描き下ろしで194ページずつ、大学の同級生同士のお話です。いつも手袋をしている鷲園に興味を持った陽キャの梅谷。一緒にいる時間が増えるにつれて、お互いが居心地が良いと感じるようになって…という展開です。さもすると重苦しい話になりかねないのに、深みもきちんと残しつつヘビーにさせすぎない、そのバランスがとても良かったと思います。ギャグっぽくテンポ良い部分もあれば、感情がブワーっとなるところもあって、すごい良い意味で振り回されました。お話の視点も適度に梅谷視点と鷲園視点が切り替わるので、どちらにも感情移入しやすかったのも良かったです。梅谷がグイグイ鷲園を引っ張ってくれるのですが、鷲園がそれに一生懸命応えようとしています。梅谷の方もただグイグイいくだけでなく、鷲園のペースを見てきちんとそれに合わせてくれていて、応援したくなる二人でした。身体の接触はないかなと思ったんですが、落としどころもとても良くて、やっと繋がった後に絞り出すように紡がれた鷲園の一言に、もう我慢できず涙が出ました。。鷲園の家族との関係も良い感じの方向に進み始めたかなというところで、もうこれ以上良い読後感にはできないんじゃないでしょうか。大満足で読了です。
いいねしたユーザ11人
レビューをシェアしよう!