ニィーニの森
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ニィーニの森

SHOOWA

心がいっぱいになる頭がクラクラする

ネタバレ
2021年8月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 赤身の肉を食べてはいけない「ニィーニの森」を舞台にした、大きく分けて4つのオムニバス作品。
▲カエルとウサギの可愛いお話。カエルくんの着ぐるみ欲しいと思う。そして、後々思い返すのです、この2人の穏やかで幸福なときを。
▲1話に登場したネコ科ココとココを育ててくれたウルフのお話。何度読み返しても泣けて仕方ないです。先に書いてしまうと、私は、この作品は「生きる」ことの尊さを描いていると思うのですが、ウルフを通して、「命を全う」し、「死ぬ」ことを受け入れる潔さも感じます。そして、ココのことを想う、無償で限りのない深い「愛」にただただ涙がこぼれます。
▲番外編としてカブトムシのお話。一夏のカブトムシのブロマンスを通して、自分たちのしがらみも消したいと思う男の子と「ニィーニの森」を夢の世界と言う男が切ない。夢が叶えばいいと願わずにはいられない。
▲前中後編と作品の中でも一番分量があり、熱量を感じます。まさか、1話で股間にリンゴくっつけてた不愛想ウサギとココが恋していた見境ナシ男オーウェンが主役を張るとは思っていなかったです。作者さんの作品は、人物相関図が割と複雑だなと思うのですが、こちらもその複雑さを生かしながら、人の性(サガ)、業(ゴウ)、憎しみ、残虐さを描かれていて、前3話との対比がすごいです。ウサギの耳があるかないかだけで、他は人間と何も変わらないのに、差別され、下等とされ、殺される世界。耐えきれなくなっての報復とエスカレートする暴力。麻痺する感覚。憎しみが憎しみを生む連鎖。そのループを断ち切りたいと動き始めるクォーターウサギ。人間とウサギがその後どうなったかは分からない。でも、逃げていいんだと思う。そこで幸せになっていいんだと思う。幸せに生きてほしいと思う。もしかしたら彼らは戻るかもしれない。戻らないかもしれない。それを、自分たちで選択できる世界であって欲しいと思う。
1話を読み返すと、輪っかのように繋がる構成。カエルとウサギ(子ブタ)が寄り添う姿が心に染みます。
4話で突如シリアスさが増しますが、ちょいちょい挟まれる笑いがいい具合に気持ちをフラットにしてくれます。Tシャツのロゴや子どものリュックもね、「ナニソレ笑」ってなるわけです。ほんと、SHOOWA先生、大好きです。(9/1までセール)
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