罫線上のカンタータ【電子限定描き下ろし付き】
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罫線上のカンタータ【電子限定描き下ろし付き】

早寝電灯

手紙を通奏低音とする2組のカンタータ

ネタバレ
2021年9月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 手紙を軸に2組の恋が描かれます。漫画を描きながら大学に通う坂上葉治は、先輩の古賀爽人に恋をしていると感じています。葉治の漫画が好きだという爽人に葉治はファンレターを書いてと頼みますが、爽人は手紙は苦手だと断ります。昔、家を出た母親の残していった手紙を握りしめて手ごと火に突っ込んでしまった爽人は心と手に火傷を負ったのでした。
第2章は葉治の描く漫画が連載されるようになった数年後、その二次創作をする港とスオのお話に移行します。そこから葉治の漫画『岸辺の手紙』の内容も描かれるのですが、これがまた良いお話なのです。そのお話に触発されて、スオは港の作品への想いを手紙にして渡します。
メールやLINEでやりとりされる言葉は軽くて、あっという間に消費されていきますが、今でもなお、遺言、ファンレター、靴箱の中の恋文など、様々な場面で手紙は人々の心を繋いでいます。神様だったり恋人だったり、遠くて近い存在に託す言葉を綴る時、書き手は自らの想いを整理し、より純度を高めて相手に捧げます。そして相手はその言葉と想いを受け取り、大切にしまって折々にそっと読み返し確認するという喜びも一緒に受け取ります。手紙って良いですね。
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