半壊の花【シーモア限定特典付き】
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半壊の花【シーモア限定特典付き】

早寝電灯

何だろうなあこのやりきれない気持ちは

ネタバレ
2021年9月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォローしてる方々絶賛の早寝先生の短編集。僕も読んでみました。表題作の『半壊の花』(タイトルだけでもう切ない)と『稲穂に帰る道/〜つづく道』がとても好きです。
双子兄弟が、本心では周りに自分達をしっかり見分けて欲しいと思いながら、誰も見分けられない事を利用して沢山の事を分け合って生きてきて。でも分け合えていたから彼らの双子としてのバランスの取れた関係性が成立していたわけで。ところが、豊との出逢いによってその均衡の取れていた状態が良くも悪くも崩れていくわけですよねえ。双子兄弟がずっと望んでいた様に、豊は彼らを自然と見分けられる、だけど、その一番望んでいたもの、豊の存在を皮肉な事に2人で分け合うことは出来ないと。いや〜素晴らしいロジックですね。それを人間の恋愛感情に当て嵌めて物語を創られてるのも凄い。
今まで分け合ってきた沢山の事と同じ様には扱えないから、双子兄弟の折り合いがつくまで豊とは連絡を一切断つ、という彼らの判断にはおいっ!と思いました(笑) あまりにもエゴイスティックなやり方で、豊の気持ちを考えるといたたまれなかったです。双子兄弟も自分達の感情をどうコントロールしていいのかわからなかったんだろうけど。
双子兄弟とやっと再会したと思ったらそこにはユウはもういなくて。あーこういう終わり方で3人の曖昧な関係性に終止符を打つんだあ…と、少しやるせない気持ちになりました。3人それぞれの幸せを見たかったのが本音ですが、こういう結末にして読者をやりきれない思いにさせるというのが早寝先生の意図でもあったのかなあ、と勝手に想像しています。それならタイトルの「半壊」という意味も何となく理解出来る様な…。
読後の行き場の無い思いに戸惑いますが、とても素敵な短編作品でした。
『稲穂〜』も切なさ溢れる物語で、良かったです。欲を言えば、最後、櫂と幸助が再会した後の彼らの話をもっと読みたかった!え〜そこでENDかーい!って心の中で嘆きました。
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