食べないの? おおかみさん。
」のレビュー

食べないの? おおかみさん。

小石川あお

愛が満ち溢れてます。

ネタバレ
2021年9月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者様買いです。『砂かぶり』のお話も、愛が溢れて涙する素晴らしい物語でしたが、もぉ、こちらもたまらなく切なくて、たまらなく愛おしいんです。物語の世界観も優しい空気に包まれて、心がじわじわと優しく、温かくなります。不思議な森の中に住む妖精、人魚、一角獣や雪男まで、おとぎ話の世界に引き込まれて行きました。
森の神様に捧げる生け贄として差し出された少年太郎。食いぶちを減らすための、単なる厄介払いで捨てられた可哀想な太郎ですが、下僕のようにこき使われて虐げられる暮らしから解放されるかのように、狼男ウルにそれはそれは、大切に育てられます。大人になったら食べると言いつつも、太郎の可愛がりようは溺愛そのものです。きゃっ。太郎の全てを労るように、慈しむように、愛でるように、ありったけの愛情を注ぎ込むウル。過保護が過ぎた親のようでありながら、それは成長と共に愛しい者への愛でしかないんですねぇ。ウルは確かに太郎を愛してるんです。誰よりも太郎の幸せを願うウルの心の寂しさが切なくて、胸が痛みます。幸せを願うからこそ手離す事を考える辛さが、もぉ涙です。
一方太郎は、生け贄である事を哀しむというよりは、食べてもらう事を待ち望んでいるかのようで、それは単純に無邪気な考えではなくて、捨てられた自分が誰かの為に役に立つ事が食べられる事と思っている太郎が悲しかったです。太郎にとってのトラウマが、あまりにも哀しい仕打ちだったのだと。
そんな太郎が、甘やかされ、温もりをもらい、名一杯の愛情をもらう。どれだけ幸せだった事でしょう。
あえて手離す哀しみは、慟哭の哀しみの涙のようで辛かった。ほんとに胸が痛かったです。
不思議な世界で暮らした日々は、いつの間にかとんでもない時を越え、夢のような感じでした。それでも互いに想い求め合う心は変わらず、必ず戻ると信じていたのでしょうねぇ。あれほど大切に育んできた二人の絆が、また引き寄せたのでしょう。もう、二度と離さないでね。幸せになってね。
二人の初めての交わりは、とても素敵な一時でした。
はぁ、泣きましたぁ。良かったですぅ。とってもいい物語でした!オススメです!
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