最高!





2021年9月16日
放送の用を成さないほど喉を傷めながら、竜起がさほど深刻に考えていなかったのは、自分以上に「スポーツ」を伝えられるアナウンサーはいないという驕りがあったからだろう。手作りの資料を作り、丸暗記ではなく血となり肉となるように記憶し、声を操って臨場感たっぷりに視聴者に伝える。しかもそこに「努力」という泥臭さは微塵も見せず、生まれ持った天分だけで軽やかに、スマートに乗り切っているかのよう見せているのだから、竜起がスポーツアナとしての自分に自負を持つのは当然。しかし実力にあぐらをかいて職責を軽んじるようでは、まず社会人として失格。ましてや竜起は、国江田でさえ一時現場を干されていたのを見て、設楽に食ってかかって抗議した過去があるのだから、もっと慎重であるべきだったのだが、その国江田を以てしても、それがたとえ麻生でも、声質やキャラクター的に自分の代わりは務まらないという自信があったのだろう。その驕り高ぶりに下された鉄槌がとても小気味よかったし、過去には計を干した設楽が正確に国江田の実力を評価していて、王子の仮面の裏の努力を見抜いていたことが何より嬉しかった。このシリーズは本当にお仕事小説として秀逸。

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