おとこのことおんなのこ
」のレビュー

おとこのことおんなのこ

米代恭

誰もにある「自分」

ネタバレ
2021年10月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み放題。
志村貴子&橋口亮輔W推薦。両者のファンなので必読でした。
当時作者さんは20代前半。その若さでこんな作品が描けるのかと驚かされました。

性に悩む二人の青年の物語。
重いテーマでありつつも、柔らかな絵柄と空気感でサラッと軽快に読み終えました。読後はすーっとふんわりした余韻を残します。
そしてその余韻から、各々考えて肉付けしていく作品かなと感じました。

性別に関しての多様性。
これは考える度に、難しいなぁと痛感します。

男だから男らしくしたい。男だけど女らしくいたい。
性に限らず自分の思考や価値観というのは、生まれ持った部分が大きいと感じます。兄弟が同じ環境で育っていても全てが似か寄らないのはそういうことかなと思います。
そう思うと誰一人として同じ価値観の人間は居らず、性に関しても多様性は無限なのではと思えてきて、だからこそ「受け容れる」という気持ちが人との関わりに不可欠だと感じます。そして他の受容という行為は、やはり「自分」というものを自分自身が受け容れてこそ出来ることなんですよね…。本来ならその手助けを親がすべき処ですが…。

この作中の2人の青年。互いの存在によって「自分」を受け容れることができた。そして次の段階に進むのに必要なのが、自分を否定していた側を受け容れることなんだと思うんですよね。この受け容れるのは、肯定するとは違う。事実として呑み込んで昇華する。壮くんの場合は複雑ですが、結局受け容れることによって彼自身が過去の呪縛から救われると思います。それをやってのけた彼の力強さが修にも波紋として広がっていると感じました。
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