耽美、それは“失われた半身”を求める心





粗野で独断専行を地で行くスタンレー・ホーク巡査部長。近寄りがたい美貌の内部管理課長アリスター・ロスフィールド警視。ミステリアスな日本人精神科医ジン・ミサオ。事件捜査を機に3人の男たちの心と体、人生が引き合い、絡み合い、穿ち合う。互いを知らなかった頃には後戻りできない彼らが選ぶ道とは…?
言葉で耽美感に酔った『アレキサンドライト』に続き、山藍先生の耽美を本仁先生の絵で愛でる作品で耽美考(その2)です。正統派の耽美作品の登場人物の多くは美しい反面、およそ熟慮や熟考とは程遠い、どうしようもなく愚かしい一面があることが多いのに、むしろ自分はそんな愚かしさも引っくるめて彼らを愛さずにいられない。
耽美は対比の美学だと思います。“真っ当”に対する“崩れ” や“溌剌” に対する“気怠さ” 、“単純”に対する“複雑” 、“不変・永遠”に対する“刹那” 。このズレや定まらなさ、アンバランスさや“駄目さ” が、そうでない確固としたモノやヒトと対比されることで初めて “美しい” と人に感じさせる気がするのです。
世間的な尺度から見れば、3人の関係は歪で“まとも” ではあり得ない。だが誰しも1度は夢見たことがないだろうか…?己の失われた“半身”、“欠けたパーツ” をピタリと埋め合う誰かとの邂逅、会う定めにあった相手と出逢い愛し合い一つに溶け合うことを…。たとえ叶わなくともそれを求め続けることが耽美であり“JUNE” なのだと思います。
コミカライズは4巻ある原作のうち1巻のみなのが残念ですが、挿絵担当の本仁戻先生が世界観を完璧に表現されており、耽美感を存分に味わえます。フォロー様の『アレキサンドライト』レビューにある通りストーリー(事件)より「美を堪能」が正解です。
なお原作は角川から1,000頁超の合冊版もあります。

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