どうしても触れたくない
」のレビュー

どうしても触れたくない

ヨネダコウ

BL設定を最大限に生かした揺さぶり

ネタバレ
2021年10月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★無口でポーカーフェイスな嶋と遠慮なく踏み込んでくるのにさりげなく優しい上司・外川のオフィスストーリー。

★転職初日の嶋が乗ったエレベーターに二日酔いの外川が駆け込んでくる。臭いも最悪、話しも最悪。なのに、いつしか嶋の視線は外川を追っている。嶋の視線と微妙な表情に気付いた外川は、嶋を誘いまくる。惹かれ合いながらも、互いの過去のトラウマに触れることを恐れ踏み出せない嶋と、自分(外川)が言った言葉に捕らわれる嶋と離れた外川。すれ違う2人。嶋の想いは、「どうしても触れたくない」ままなのか…。

★間延びした喋り方と相手の可愛くない反応などお構い無しの外川さんに大人の余裕を感じます。嶋くんの素っ気なさに可愛さと愛しさを感じる外川さんに、嶋くんが敵うはずがないなと思います。それでも、自分が傷ついた過去や外川さんの過去を受け止められるほど強くはない嶋くんの葛藤と、「どうしても」に続く言葉が変わる嶋くんの姿に胸打たれます。
性的マイノリティへの理解が深まりつつある現代ですが、それでも、男同士であることで不安になること、諦めなくてはならないこともあるという現実を突き付けられます。それを2人で越えていく覚悟と思いやる気持ちは、同性同士に限らないかもしれませんが、やはりBLとしての設定を最大限に生かした揺さぶりだと思いました。

★描き下ろし含めて226ページ。セリフのないコマや視線の流れ等で心情が丁寧に表されていると思います。『夜明け前』の「飾らなくていい」と言っていた写真立てに…泣けてしまいます。

★作者様の描く煙草を吸うシーンがとても好きです。禁煙失敗もありです。
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