ユピテルにおねがい【単行本版】
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ユピテルにおねがい【単行本版】

荒井よしみ

心には僕らの星空

2021年10月25日
荒井先生、作者買い。
『息をとめて〜』で魅了されてしまったので、表紙だけで泣きそうです。

荒井先生の作品は私の中で童話の様な存在で、とてもイノセントな世界です。だからでしょうか。実年齢よりも幼く見える登場人物が、よりその純度を高めている様に思えます。
表題作は3pなのですが、3人の世界が余りにも透明で優しくて、いやらしさを全く感じませんでした。

友人でも、恋人でも、家族でもない関係。
それぞれがその関係に戸惑い、不安と脆さを感じながらも、3人の誰かが欠けた世界なんて想像がつかない。
この関係がいつまで続くか分からない儚さと、彼等の祈りの様な想いが、澄みきった夜空に輝く星の様に美しい。
『ユピテルにおねがい』再読する度に、表紙とタイトルを見るだけで胸が熱くなります。実物を拝みたくて、紙で購入してしまいました。

『ヤンキー〜』は甘めの作品。ホッコリします。

そして『星の花』。
表題作を凌ぐほど、心を打たれた作品です。
荒井先生は細かい描写が丁寧で、本当に素晴らしいです。
この作品も表紙の2人が全てを物語っています。
読後は是非この表紙を見返して下さい。
どのコマからも想いがじわりじわりと心に滲んできます。
何度も何度も読み返しています。
美しい想いに涙します。

全体を通して「慕う」という言葉が思い浮かびます。
そっとそっと、密かに紡がれる関係。
彼等の優しい世界がいつまでも続くように、私も星空に願います。
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