このレビューはネタバレを含みます▼
行き詰まった状況を自分の力ではどうすることもできない、まだ中学生だから。ぬくぬく守られて何の心配もしないで生きていていい年頃に、大人の勝手で八方手詰まりの環境に押し込められていた柏瀬の姿に胸が痛んだ。
作中では3年ずつ時が進んで、成長するごとに少しずつ不自由だったことは自由になり、生きやすくなってはいくんだけど、過去はなくなる訳じゃないしついた傷が完全に癒えることもない。ただやるせなく、あの頃手を差し伸べてそばにいてくれた星谷に感謝したい気持ちになった。
後半は2人の突飛とも思える行動に、胸が締め付けられるように苦しくなった。そうせずにいられなかった気持ちもわかるし、自分達がずっと一緒にいられる未来を思って吐露した、切実な思いに泣けて仕方がなかった。
2人の必死さが痛いほど伝わってきて、こんな表現をされるなんてこの作者さんはすごいと思いました。2人の祈るような思いが圧巻で、零れた言葉の数々に心揺さぶられました。
辛い前半からラストの優しい結末まで、片時も目が離せない心震わす作品でした。