砂の城
」のレビュー

砂の城

一条ゆかり

名作です

ネタバレ
2021年11月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「りぼん」1977年7月号から1979年7月号まで、および1980年9月号から1981年11月号まで掲載。裕福なローム家に一人娘のナタリーが生まれた日に家の前に捨てられた4才のフランシス。身分の差はあれど2人は将来一緒になりたいと願い、ナタリーの両親も理解を示します。幸せな未来がやってくると思っていたところでナタリーの両親が事故に遭い...。作中で「人生なんて砂の城のようなものかも知れないわね つくってもつくってもいつのまにか波がさらってしまう」というナタリーの台詞があるのですが、ナタリーの幸せはいつも もう少しのところで脆く儚く消えてしまいます。他のレビュアーさんが、とっても「砂の城」に思い入れのある方だと思いますが、2度しか読んでいないとレビューされていて、頷けました。読むのがしんどいです。一条先生が これでもか、これでもかという障害のてんこもりのお昼のメロドラマを目指したらしく、第一の障害は身分の差、第二の障害は年の差でナタリーが綺麗なお姉さんから綺麗なお母さんぽくなっていく感じがせつなかったです。ナタリーはとても優しい人に囲まれて童話作家として成功し、お姫様と王子様が結ばれる物語を書きながらずっとフランシスのことを思い続けていて、本当にナタリーにもっと幸せになって欲しかったです。ナタリーの人生を暗転させることが悪意によるものとは限らなかったのも辛かったです。登場人物のそれぞれの恋が激しくて、当時の「りぼん」の読者はどんなふうに感じたのでしょうか。そしてラストはどう受け止めたのでしょうか。ナタリーにとっては幸せなのかな。綺麗なラスト。綺麗じゃなくてもよかったのに。昭和的というか。たとえ行く末で恋に敗れようが仕事に生きて行けばよいのに。あー、ロベールどうしてもっと押してくれなかったの?フランシスと再会したときもあんなのある?そんなことをつらつら考えました。心情的には星4です。あまりにナタリーに辛いことが起こり過ぎて、アメリカのナタリーとジェフの関係もちょっといびつに思えるので。でもこんなにのめり込む作品はなかなか無くて、すごいと思うので星5で。重くてダメージがありました。なかなか読むのに勇気がいりますが、重たいのを読みたい方にオススメします。
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