大好きな妻だった
」のレビュー

大好きな妻だった

武田登竜門

溢れんばかりの感動と涙、そしてふたりの愛

ネタバレ
2021年11月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 短編感動作という事で、かなりの覚悟を決めて読みましたが、元々ゆるっゆるの僕の涙腺、完全に崩壊しました。溢れんばかりの涙と感動で、胸がいっぱいです。
千香さんと昴さんの様な状況、誰にでも起こり得る状況だからこそ、もし自分が彼らの立場だったら…と、読後考えざるを得ませんでした。もし自分が千香さんの立場だったら…きっと僕は自分の残された時間を大好きな人とこれまでに無いくらい楽しく過ごしたいと願うだろうなあと思いました。自分がいなくなった後の相手の人生を考えて、自分を嫌いになってもらう…その勇気と覚悟は僕にはないなあと、正直思ってしまいます。だからこそ、一番辛いはずの自分のことなんかよりも、昴さんを最優先に思い「嫌なヤツ」をずっと演じた千香さんの意思の強さや相手本位の思いには、昴さんへの無償の愛の様なものを感じて感動すると同時に、やるせない気持ちにもなりました。
それから、自分を昴さんの立場に置き換えた時、僕は絶対に昴さんがした様な反応はできないなあと思いました。もちろん、心から嬉しいんです。自分を一番に想ってくれているとわかるから。それでもやっぱり、「嫌なヤツ」を演じていた事を泣きながら責めてしまうかもしれない。。それが優しい嘘であっても、少しの怒りと悔しさは感じてしまうかもしれない。。残されたふたりの半年間を幸せいっぱいに過ごしたかった…と、正直思ってしまうと思うから。。だからこそ、千香さんの意図を知りながらも尚、彼女の願いに反く事なく、ただ後ろからその意思共々彼女を力強く抱きしめる昴さんの姿に、言葉も出ませんでした。ただただ感動の涙が溢れてきます。
最後に昴さんが選んだ写真も、ふたりの愛の形が一番鮮やかに表されているんだろうなあと思いました。千香さんと昴さんがこれまで愛し合ってきた時間やその軌跡が、鮮明に思い浮かばれる様です。
色々な人たちの様々な愛の形を知っていく中で、またこの様な心動かされる作品に出会えてとても嬉しいです。千香さんと昴さんという、1組のカップルの愛に満ちた最期の別れに、胸打たれる思いです。
自分のパートナー、そして大切な誰かをもっともっと大事にしたいと、改めて思わせてくれる物語でした。
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