火傷と爪痕
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火傷と爪痕

雨隠ギド

大人の恋は最後の最後に殺し文句で告ります

ネタバレ
2021年11月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『青年発火点』のスピンオフ。前作の主人公•目白の叔父•編集者の古賀正宗と担当作家の名島健のお話。新人賞受賞後6年経っても新作に取りかからない名島は、ふわふわと取り付くしまのない遊び人で、ガチガチの古賀とは反りが合いません。実は古賀は名島のデビュー作のファンなのですが、そのデビュー作の生原稿を名島の家で偶然見つけます。ところがその原稿には、名島の父である有名作家•名島時彦の名前が記されていたのでした。
デビュー作は父親の盗作だったのか。古賀は当時の編集者や愛人にまで話を聞いて回るうちに、名島がわざと見つかるようにその原稿を置いたのでは?と思い至ります。
男の失恋は痕の残る火傷であり、そんな痕を持つ男の背中に狂おしく爪を立てる恋人との大人な恋が描かれます。シリアスな部分の前後はコミカルに、苦しい部分はふんわりと、この作者さまならではの独特の世界が優しいです。
『青い鳥より』に続編『君で最後』が掲載されています。
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