天国も地獄も
」のレビュー

天国も地獄も

西田東

西田ワールド全開な佳編

ネタバレ
2021年12月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヤクザの姫野は、何ヶ月かに一度ふらりと高校の同級生•教師の城田の前に姿を現します。いつも同じようなどうでもいい会話を交わすだけで姫野は帰って行くのですが、それでいて離れている間は二人とも高校時代の相手のことを思い出しています。相手の好意をわかりつつ、それをおくびにも出さずにきた二人が、20年の時を経て嵐のように求め合います。城田の教え子や姫野の足抜け、ハワイの老婦人など絶妙に配置された設定と登場人物とが、かちりかちりとパズルのようにきれいに嵌まってラストへと導かれてゆきます。「泣くな。俺がおまえを捨てるわけねえだろが」の決めゼリフに泣きます。
『花嫁によろしく』新郎に捨てられた友田と、新婦の父•則武のお話。フラれた友田が泣きながら新郎を庇うさまが則武の新しい扉を開いてしまいます。
この作者さまが描くちょっとくたびれた始めた男性は、だらしなかったりいい加減だったりするのに何故か可愛いのです。その可愛らしさに目が眩んで、おじさん達の色んな欠点をなんとなく許してしまいます。緻密なプロットと不思議なユルさんが織りなす心地よさをぜひ味わって下さい。
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