何でもいいから消えてくれ
」のレビュー

何でもいいから消えてくれ

ひなこ

ゾクゾクする執着攻めが面白い

ネタバレ
2022年1月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『何かいいの見つけた!Re:』で、散々と小春と大杉の恋をかき回した鴫原と八度のスピンオフです。単独でも読めますが、何か~のシリーズから読むと、Re:での鴫原、八度の不穏な空気感と態度のワケがストンと腑に落ちて納得出来ますよ。何かあるだろうなという匂わせからのスピンオフは、とても嬉しい。
小春&大杉達のほわほわ幸せCPとは真逆で、ピリピリと張り詰めた空気の本作に緊張感がスゴい。気になる二人の関係が明かされるスピンに期待が高まります。小春と大杉先輩も見たいな。
八度に初恋と、裏切りという名の失恋を味あわせた鴫原。八度にとっては砂を噛むような思いだったと思います。傷ついた心がヒリヒリと痛い…
当の鴫原は性に奔放で、彼にとってはまるでそれが普通のように悪びれないのがモヤモヤします。八度を傷つけた事の罪悪感がないようで、彼の気持ちよりも自分に好意を寄せた者に対する執着が怖い。八度なら許すだろう、俺の事を忘れられないだろうという慢心があるようにさえ見えてしまいます。取り上げられたお気に入りのオモチャが、手元に帰ってきたような感覚かと…鴫原の執着はどこにあるのだろう…
その執着の理由に鴫原自身が気づいていないとしたら…なぜ八度を手離せないのか…自分の奥底に眠っている知らない感情に気づいたとしたら、これはもう面白いしかないんですよね。
狙った獲物を攻め落とす悦びを見る面白さよりも、鴫原が八度に本気で落ちて行く様を見てみたい。相手の気持ちに無関心で、冷めた目をしている鴫原が、本気になった時、一体彼はどんな表情をするのだろう…それが楽しみです。
八度には、とことん突っぱねて欲しいけど…
敢えて同じ高校に入った八度には、確固たる意地とプライドが見えますが、やっぱり初恋の甘さの蜜の味を知ってしまった彼にしてみれば、愛されていたと思いたい気持ちとか、忘れられない思いが心の中で複雑に絡みあってるような気がしてなりません。
本当に憎んでしまえば、二度と顔も見たくないし関わりたくもないはず。過去に決別出来ない八度が、とても切なく感じます。好きだから、会いたいと思うし、忘れて欲しくないと思うような、だからこそ切ないのですよねぇ。触れる事を許してしまうように、抗えない心と身体が胸の奥底にしまった感情を呼び覚ましそうです。
歪な形の二人の関係から目が離せません。
ちょこっと大杉先輩と小春も登場していますよぉ。
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