アンダー・ザ・ドームと思いきやBENT





2022年1月5日
外界からある日突然隔絶されるコミュニティという理不尽さは、ベルリンの壁や、スティーブン・キングのアンダー・ザ・ドームの設定を借りているのかな、と思い読み始めました。連作短編の形ですが、時系列は前後します。なので何回か読み返しました。基本、閉塞感のある異様な状況での日常生活が淡々とつづられますが、感情を揺さぶられるような話も出てきます。頻出する主人公は3世代目の希、花井沢町の最後の一人となった彼女の最終話は圧巻です。境界をへだてた相思相愛の相手と、日常生活を送り、同じ食事をし、同じベッドで寝るのに、触れ合うことができない。彼女の慟哭は、ナチの収容所を描いた名戯曲「BENT」を想起させます。他のレビュアーの方のネタバレにもありますが、ハッピーエンドを示唆しつつ、彼女が境界を越えられたかどうかを読者の判断に委ねているのはうまいと思いました。名作。

いいねしたユーザ4人
-
タミコ さん
(女性/50代) 総レビュー数:94件
-
ジェリ さん
(女性/40代) 総レビュー数:90件
-
shikimi さん
(女性/50代) 総レビュー数:429件
-
Boo さん
(女性/50代) 総レビュー数:47件