寄越す犬、めくる夜
」のレビュー

寄越す犬、めくる夜

のばらあいこ

身を切る痛さと業を背負って生きていくこと

ネタバレ
2022年1月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ カジノで働く新谷はディーラーの菊池がウェイトレスと組んで金を抜いているのを察して注意しますが、すぐに店長の須藤の知るところとなります。新谷と菊池は上の組織であるヤクザに痛めつけられ、法外な借金を課されるのでした。まだ10代の菊池のどん底な境遇を可哀想に想う新谷は菊池を抱くようになります。支配されるセ◯クスしか知らなかった菊池はその優しさにしがみつき、それをさらにヤクザ組織から徹底的に利用されるのでした。一方、店長の須藤に「新谷くんは可哀想な奴が好き」と看破された新谷は、須藤と関係することで借金返済をしてゆくのですが、須藤もまた壮絶な過去からヤクザの会長のオンナとなりクスリに溺れる可哀想な存在なのでした。次第に追い詰められてゆく新谷と共に、最初のカードを寄越した菊池も、新谷の選んだカードである須藤も、それぞれに否応無く追い込まれ、事情はどうあれ全て自らが選んだカードによる結果であることが厳しく突きつけられます。全てが終わった時、してしまったこと、できなかったこと、それぞれ罪悪感を抱えて生きてゆくのは皆同じで、3人は罰を背負いながら生きてゆくという最後のカードを選びます。きりりと冷たい空気の中、一人歩き出す須藤と降り始めた雪に、物語の終わりと新たな人生のスタートが象徴される素晴らしいラストでした。
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