カーテンコールで笑え
」のレビュー

カーテンコールで笑え

西のえこ

く、黒川ーーーーーっ。

ネタバレ
2022年1月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『エブリデイ イズ ア グッドデイ』でガチ泣きしてしまった作者様の嬉しい新刊です。やっぱり、心理描写が繊細で、深く切り込んで胸を刺すのです。
お笑い芸人同士(先輩・後輩)の切ない想いが交差しながら、大切なものが見えてくるすれ違いラブ。
純粋にお笑いが好きで、漫才が好きで、人を楽しませる事に夢を乗せて必死に追いかけて、憧れた人と同じ世界に入ったワク。憧れがいつしか恋愛感情となって、その想いが叶って幸せなはずなのに…
人気絶頂なエージの忙しさ故とはいえ、二人の時間が二人でいるのに何だか空しく感じます。ワクが不安や寂しさを感じるのもわかるし、実際エージの気持ちが見えて来なくてモヤモヤしました。身体を重ねても埋められない心。紙媒体の帯にあるように、「まだ片思い」と言うのはそういう事だったのかと思ったんですけどね…
悩みや感情の落ち込みは仕事に影響するし、ワクの相方・黒川の心配は当然の事。
ワクを都合良く振り回しているようなエージが身勝手に見えましたが、あまりにも不器用だし言葉が足りなさ過ぎる。人気があってその世界の上を走り続ける人にも、不安や恐怖を感じながらまたその先を見据えなければならない辛さはわかります。もし、ワクの心にもっと寄り添っていたら、虚栄心や見栄など捨て去ってしまっていたら、ワクを傷つける事はなかったかもしれない。真っ直ぐに見つめるワクの笑顔を失う事を恐れる前に、エージも真っ直ぐワクにぶつかっていたら自分自身も傷つけなくて済んだかもしれない。「まだ片思い」と思っていたのはエージの方だったのかと思うと意外でした。
心のすれ違いで遠回りしてしまった恋を救ったのは、誰でもないワクの相方・黒川だと思います。誰よりも、エージよりも、ワクの事を側で見てきた彼は一番ワクの事を心配して来ただろうし、仕事の事を考えたらもっといっぱい言いたい事があったはず。黙って見守って来た黒川が、ワクの危機を感じ取り、取った行動が何よりカッコ良かったです。モヤモヤを全部取っ払ってくれたのは黒川でした。エージの相方・川治もいい人で良かったです。ワクもエージも相方に恵まれて幸せだよね。公共の電波を使うのは物語の演出としてはお洒落ですが、自分の足で直接迎えに行って欲しかったかな。そういうとこだぞ?、エージ(笑)

書き下ろしの最後の最後が面白かったです。やっぱり私、黒川が好きっ。芸人に美味しいオチ万歳。
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