メロンの味
」のレビュー

メロンの味

絵津鼓

メロンが喉に引っかかる

ネタバレ
2022年1月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙の色味が独特で深みと温もりが有りますね。全く2人が触れ合わない、どこを見ているか分からない。まるで心の距離を表してる様です。

入り口冒頭はとても入りやすく、クラブハウスでバイトをしている中条君(ゲイ)の所に常連客の木内(ノンケ?)から無理やり同居を迫られ、なし崩し的始まるストーリーです。
一見すると軽いノリと有り得ないシチュエーション。これはファンタジーだと認識します。
違うんですよね。リアルです。苦しいです。
もしご自身で鬱を患ったり、家族や身近に居る方には辛い話かもしれません。
10年前に作った曲から生み出せない木内君。
一人では眠れない。
外の景色が歪む。
私は消費側なので完全には理解出来ませんが、やはり音楽に限らず芸術的な商品を作り出す側の苦労や挫折は相当なんでしょうね…。絵津鼓先生の叫びが内包されて居るような気がしました。

字が綺麗で丁寧にノートに食品表示を写す。木内君、すごく真面目なんですね。努力が見えるからこそ、夢は「曲を諦めること」が何とも心に残りました。
恐かったです。この子はいつか自分から消えてしまうんじゃないかと。
元看護士の元彼女も救おうとしたんです。
「一緒に治る様に協力する」「薬を飲めば良くなる」「薬を飲めば良くなるのに、治す気あるの?」何が正解かは分かりませんが…彼にはダメでしたね。
でも元彼女の気持ちも理解出来ます。
私はアナタの為にこんなに努力しているのに、どうしてアナタは応えないの?という自己満足ですが。

中条くんも彼なりに悩みが有り踠いてますが
ただ甘える、甘えさせるだけでなく、自立します。

2人の会話や間、空白の多いコマ、彼らの表情によって終始本質を捉えるような絶妙にすり抜ける様な何とも伝え難いのですが、すり抜けた先の最後の本心を出した台詞でグワッと感情が揺れてしまい、喉が締まりそうで苦しかったです。
泣くを突き抜けた感情は苦しいのだと感じました。

一緒に治そうとする愛も有ります。だけど
ただ側に寄り添う見守る愛もある。
本当に2人が出会えて良かった。

絵津鼓先生のあとがきに先生も当事者だったかの様な書き込みが有りましたが納得です。
だからこそ深く心に響くのでしょうね。
購入して中々読めなかったのですが、見計らったかのタイミングで読む事が出来たのも天啓な気がします。
因みにメロンの食後、喉のイガイガはアレルギーです((涙)
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