きみは僕に愛を突き刺す【完全版】
」のレビュー

きみは僕に愛を突き刺す【完全版】

紅井採乃

苦しみ悲しみは、1人ではどうにもならない

ネタバレ
2022年2月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 誰かに助けを求めないと、どうにも乗り越えられないものってあるんだな…と悟らされた作品です。
新刊発売の作品の中に、この作品の続きがあると知ってとても嬉しく、本当に?と何度も確認してしまいました。

作品の続きをまた読み始めて、主人公の苦しみやそれにもがく姿、差し伸べられた手に思わず縋る描写に共感しました。傷付いた心は癒やされたかに感じても以前の心に戻る事はなく、ずっとそれを抱えて生きていく…どうにもならない不安感に突然襲われ、パタパタして、いてもたってもいられずいつもの自分ではない自分を見せてしまう主人公。
そんなどうする事もできない、ままならないものが人生にはあるよ、と言っている様な物語。主人公以外の登場人物すべてにも、そのもがく姿があって…それぞれが主役級の深く重いお話でした。

古い絵や描写なので、嫌厭する方もいるかな?と思いますが、ですが何ていうのかな…。昭和からの作家さんて、選ぶ言葉が詩的というのか。(例えが古いですが、「王家の紋章」の冒頭。おぉ…ナイルよ…みたいな)主人公の気持ちをオリジナルの詩にされて表現したり、そのインスピレーションとなった歌詞や俳優の台詞を使って、今、彼がどんな感情に包まれていてるのか…そんな描写をされている。(詳しくは分かりませんが、何となく象徴主義と表現主義が混ざり合った様な表現というのか…。「あっ!」と言わせて始まる情事に必ず主人公の手が謎に上がる、そこに集中線!みたいな…)
端折ってますが、シリーズ3の最終話。主人公の言葉が刺さりました。。
毎日あの日を想う 硬く冷たくなっていく君 僕の「愛」が失われた日
“memento mori”(羅:死を憶え)
僕は毎日「死」を想う 僕が死ぬその日まで 少しの間お別れを 君の許に辿り着くまで
ー君は それを僕にくれると言うの? 君は僕に愛を突き刺さすー
…この最後の突き刺さす愛は、「死」と同意なのかなと。 1ページ全文のその言葉は、何か映画のエンドロールを観ている様で…その世代の作品に慣れ親しんだ私には、涙涙の物語でした。シリーズ4も待ってます!!編集部さまー祈
いいねしたユーザ12人
レビューをシェアしよう!