【電子限定】翼なき彼ら
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【電子限定】翼なき彼ら

西田ヒガシ

朝も昼も夜も夢の中も抱きしめていたいひと

ネタバレ
2022年2月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 小学生の木田くんと睦くんが翼を持つ何かを助けます。お礼に一つ願いを叶えるという声に、ムツミくんは「大好きな人といつまでも一緒にいられますように」と願います。場面が変わり、40代半ばとなった木田秀彦が故郷近くを車で通りかかった時、自分を呼ぶ声とともに1枚の羽根が舞い落ちてきます。引き寄せられるように故郷に立ち寄った木田に、かつて共に過ごした藤井睦の記憶が鮮やかに蘇ります。中学半ばで転校した木田が立ち寄った母校では、よく知る校長と睦とが迎えます。黒い髪•黒い瞳の可愛かった睦はヒゲと翼を生やしていました。木田と睦にしか見えないその翼は、睦が家族と事故に遭った時から生え、同時に「おまえの愛する人は誰だ」との声が聞こえるようになり、導かれるように故郷に帰って来たのでした。片目を失った木田と娘を失いかけている睦は豪雨で町に閉じ込められます。飛び去る翼、舞い落ちる羽根、羽搏きの音が随所に挟まれ、死の身近さ、命の在り方を暗示する、ちょっと不思議で温かいファンタジーです。
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