印象は地味だが波瀾万丈の女の生き様だった





2歳若い長谷川町子先生は有名だが、上田先生も、凄い。しかも女性の身の上ならではの状況も繊細に描かれていて、単なる1漫画家の話で済んでない。
凄いポジティブであるし、カッコいいところも。
まだ6巻で途中なのだが、書いておきたくなったので筆を執る。続きはまた後で書こうと思う。
事実を出して来ているので、徒に数字の誇張に走るなどといったレベルの低いことをしておらず、起きたことを扇情的に大風呂敷広げて語ったりしてないから、大袈裟なドラマに仕立ててはいないのに、陰影の濃いドラマがそこにある。
すごくいいので、 NHKに題材にする提案をしてしまったくらい。。
昭和の焚書坑儒の時代、私の幼少期にも白いポストが駅の出入口にあった。今、自由の良さを分かってない人がいるが、上田氏と手塚治虫氏とが漫画擁護に立って、漫画全てを悪書と決めつける風潮に対抗するくだりは、上田氏のパワフルな発言に拍手喝采気分になる。
[読み終わって]
村上もとか先生、ありがとうございます、としか、もう言いようがない。
先生でしか描けなかった話かもしれない。村上先生だからこそ、その時代を資料的な意義からも絵に見ごたえある正確さと説得力を以て描けたし、上田としこ先生という女の人生を漫画家視点でも時代の一部並走者的立場としても、当事者感覚で見せてくれた、と思う。
また、女が生きていくのには闘わなければならないことが山のようにあった当時、彼女が居てくれたことで、一体どれだけの人間が助けられたことだろう。何十人なんてレベルではきかないような気がする。タフな上田先生の涙や苦悩にも、美化せずきちんと触れながら、本書は、後世に漫画の読み手となる私たちのこの今の幸せな環境に繋がる、土均しの日々を伝えてくれた。平和の下で、喜んでこうして漫画を手に取る姿を、遠い空の上から目を細めているだろうと想像する。

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