はるのうららの
」のレビュー

はるのうららの

三崎汐

それぞれの想いが交差して

ネタバレ
2022年3月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォロー様方のレビューを読んで即買いでした。
小学校6年生。
クラスメイトにいじめられている春希のクラスに転校してきた春介。何故春希は揶揄われているのか、春介はどんな家庭の状況で転校してきたのか?
薄紙を剥ぐように最後のページまでを存分に使って明らかになっていく彼らの周辺と恋心。
田舎町の閉塞感や一般的とされる価値観にがんじがらめの雰囲気が息苦しい。
彼らが佇む橋の欄干から見える川の流れのように、ゆらゆらと掴みどころのないあの年頃。
微妙な成長期に惹かれ合い揺れ動く彼らが懐かしさのフィルターを通したように滲んで見えます。
春希の母にも春希をいじめていた美山にも、春介の元カノにも、春希の兄にもそれぞれの想いがあって、共感する部分があるんですよね。
でも読んでいて辛いとか痛いシーンはほとんどありませんでした。描き方によってはもっと苦しく描けた筈なのに、本当に悪い人はいず、春介と春希の思いに嘘がないから救われる。
ファンタジーだけど出てくる人が皆「普通の」人なのでスカッと胸がすくわけでもエロがあるわけでもありません。
手が触れる、唇が触れる、いつも彼のことばかり思い出してしまう、そんな恋です。
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