このレビューはネタバレを含みます▼
兄の元春と5つ下のの弟•秋生は両親を早くに亡くして二人で暮らしています。男に身を売る兄は、真面目な優等生の弟をたった一つの希望として、自らは泥の中に身を沈めて暮らしを支えています。弟は兄への劣情を自覚しながらも、大好きな兄の為に泥の中で咲く蓮の花のように振る舞っているのでした。クズな兄と清純な弟という組み合わせでスタートしますが、ストーリーが進むにつれて、マトリョーシカのように兄•弟それぞれの感情だったり想いだったりが次々に姿を現してゆきます。カポンカポンとマトリョーシカが開くとともに、それまで見えなかった二人の意外な姿が現れ、最後の核の部分では世間や常識など一切を取り払ったお互いへの想いだけが残ります。善い悪いは別にして、誰からの評価も批判も歯牙にかけないその純粋さは、泥中に根を張りながら水面よりも遥かに高く咲き誇る蓮の花のように思いました。本人達は幸せで、それだけに悲劇的なメリバになるかと思いますが、恋愛を究極まで突き詰めた一つの形かと思います。