影の国から
」のレビュー

影の国から

高岡あまね

“影”…独特の世界観に引き込まれる

ネタバレ
2022年4月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●ハッピーエンドではないけれど、アンハッピーとも言い切れない。各々幸せな結末だったのかもしれないとも思える。でも少なくとも「ラブラブ」という展開ではなく、いじめや死のつらさ、悲しみが絡むものが苦手なかたはご注意です。
●1〜5話は視点の主を変えて物語が展開していきます。当真、影のトウマ、和樹、影のカズキ、影の国の番人トワ。同じ事柄を別視点で語ったり、過去に戻ったり。最終6話はトウマが物語を閉じて、トワだけが(いつもどおり)一人残される。読み終わったときため息が出ました。
●表と裏が対等ではなく、あくまで影は影。全てが表裏一体で動く世界で【例外】だったのがトウマとカズキ。影の国で自我を持つ唯一無二の二人がお互いに惹かれ合うのは必然。でも表の世界の二人は似て非なる関係になっていて…
●表の和樹は自分が当真を好きだと認めることができなくて、逆にいじめてしまう。そこに恍惚を抱いていたことにゾワッとする。表の二人の心は結局交わることはありません。でもこの二人には、どちらかが…という終わりしかなかったようにも思えます。影の介入があろうがなかろうが。
●影の二人は表に比べて(そうなるべくしてなったのかもしれませんが)どこか大人びていて、どちらの最期も「ああ、そんなふうに終わるんだね…」という感じでした。じわじわと心に沁みてくる。
●総242Pありますが体感は結構あっという間で、吸い込まれるように読んでいました。ページ数に対しては定価でもお安めだと思いますが、セールにて拝読させていただき感謝です。
→→→●続編拝読しました。総55P、3つの後日談。本編を補足、補完するような内容ですが、個人的にはあくまで補足の域を出なかったな…という印象です。ご参考まで。
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