異色のスピンオフ。味わい深い素敵な作品。





2022年4月5日
スピンオフって、本編の脇役と誰か、あるいは脇役同士っていう新しいカップルを描くのが主だと思います。でも今作は、本編の主人公と、本編でキーマンだった怪しげな男との過去の関係を描くという設定。チャレンジングな設定にゾクゾクした。本編読者としては、この二人は結ばれなかったと知ってる訳で、作者さん曰く、スピンオフだからできたという「別れを描く」極めて情緒的で文学的な作品。その二人の絡みは恋愛よりもっと濃くて熱い情や欲に満ちていて、とてもリアルだった。上手く行かないのも仕方がないし、だからといって絆も途切れることがないのも頷ける。友情や恋愛っていうカテゴリーに収まりきらない関係は実際の人間関係でしばしばあると思う。そして、情が残っていても敢えて手放すという経験のある人も多いと思う。今は別な相手を慈しんでいても、過去は過去として存在する。そのような微妙な心情や関係を描くのが上手だなぁと嘆息した。本編より続編より好きな作品。先生の最新作の長編オメガバースも、オメガバースとしては異色作ですがそこが面白い。これからも先生の作品を追いかけていきたいです。

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