放浪息子
」のレビュー

放浪息子

志村貴子

それぞれが成長していく様が感慨深いです

2022年4月15日
敏感で鈍感、繊細で大胆な10代の子ども達が沢山出てきました。
「自分はどうしたい?クラスのみんなはどう思うだろう。お母さんはなんていうのかな...うるさい...うるさいうるさい!」そんな声が聞こえてきて切なかったけれど、懐かしい気持ちで読んでしまいました。
煮詰まって哀しくなって失敗してこの世の終わりだと思っても次の日は同じ時間に日が昇ってしまうんだよね。
相変わらず大人の何気ない一言や友人のちょっとしたしぐさが喉に刺さった小骨の様に何年も苦しめるけど、小骨は自分の栄養になると信じたい。
大人だって冒頭で出てくる先生みたいにめちゃくちゃだしね。正解なんてわからなくて人生はじめてばっかりなんだもの。

全15巻、以前に購入していましたが一気に読みたかったのもあり温めてありました。
14時ころから読み始め20時まで。そして、次の日朝4時から6時まで。志村色に染まっています。(ほんとは間髪入れずにぶっ通し読みたかったけれど主婦には無理な話ねぇ~)

志村先生の作品は登場人物を無理に救いもしないし罰も与えないから一人一人の人生に余韻を感じてしまいます。男の子になりたかった女の子も、女の子になりたかった男の子も、そんな子が好きだった男の子、そんな人に恋した女の子。拒絶も容認も紙一重だし、自分がどうしたいかなんて一生変わらないなんてことは無いかもしれない。あるかもしれないけど。
5年生から高3(+2年かな)までのお話ですが、主人公のにとりんを中心とした青春群像劇というのかな。色々な人に出会って交わって成長していきます。言葉数もすくないにとりんですがきちんと感じて行動して自分を形作っていく様が少年から青年になったんだととても感慨深いです。

内容自体は書きようによってはかなりヘビーだと思うんですが、先生の絵と軽やかなコマ送りとテンポでさらさらと読むことが出来ると思います。それでも15巻一気は大変ですけど(笑)
しかし読んでいる時間すごく楽しかったですよ。

志村先生が10年以上をかけて描きあげた作品。
ありがたや~。
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