悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~
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悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~

白梅ナズナ/まきぶろ/紫真依

ありふれた題材を新しく。斬新な作品。

ネタバレ
2022年4月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「転生したら〇〇だった」系の物語は今やありふれた題材であり、似たような設定の作品で溢れている。しかし当作品は、題材をそのままに転生前の記憶の復活と同時に追いやられがちな本来のキャラクターにスポットライトを当てる新しい切り口で描いた物語で、とても斬新であると感じた。

「転生したら〇〇だった」系の物語に共通して抱いていた疑問点「身体を乗っ取られた本来のキャラクターの心(魂)は何処へ行ったのか」に対する1つの答えを得られたことが大きな評価点となった。

この作品の何が良いかと言うと、主人公である『中の人』レミリアとエミの設定である。レミリアからはエミを感じることが出来ても、エミからはレミリアを感じることが出来ない。この設定が作品の随所で活かされており、レミリアの感情をより深く効果的に読み手に感じさせる働きをしている。読み進める程に感情移入してしまい、続きが待ち遠しくなる。このアイディアを閃いた作者は本当に素晴らしい。
心優しいエミによって救われ、愛を知った悪役令嬢レミリアが、今度はエミを救う為に立ち上がる。彼女の復讐は、エミが築き上げてきた心優しいレミリアをそのままに、復讐相手に最後まで何も気付かせず、隙もなく完璧に…そしてジワジワと追い込んでいく。

『星の乙女』が醜悪・性悪で…よくもまぁ、ここまで酷いゲス顔が描けるなと感心してしまうくらいの悪者に仕上がっている。最初は心優しいエミと『星の乙女』のターンなので第2話あたりまでは胸糞悪い描写が多々あり…ですがご安心を。エミを傷付けた悪者たちはキッチリとシッカリと報いを受けるタイプの作品なので、悪者に救いを求めない人・スカッとしたい人にもオススメ。

原作では一文で終わっていたレミリアの(計算された)善行を漫画版では詳しく描いているので、原作よりもボリュームが増している。原作よりも満足感が高く、より楽しめるのも高評価。

「転生したら〇〇だった」系の量産型の物語に追従するのではなく、新しい物語を作ろうとする作者の熱意が素晴らしい。
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