恋と罪悪
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恋と罪悪

たうみまゆ

作者らしい世界観の5つの短編集

ネタバレ
2022年5月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校の同級生である真面目な飯田と自由な柴田はセ◯レで、当時交わした30年後に会う約束を、警察署長の飯田と中国マフィアの大物•柴田が果たします。BLとの呼び声高い漱石の『こころ』をアクセントに、あの時口にできなかった高校時代の輝くような恋と憧れが再び二人に去来します。『あいのいろ』浮世絵の絵師と摺師になった幼馴染のお話。良い浮世絵を描けるハルとハルの為に摺師になったトウジが、彫師を挟んで素晴らしい絵を生み出します。『きつつき、のノック』マンションで毎夜聞こえてくる啜り泣きの声の主が幽霊ではなく隣人と知り、リーマン桂はほっとします。隣人は樋口というタレントで、やたら桂になついてくるのでした。人と関わらないようにしている頑なな桂の心の扉を、泣き虫樋口が力いっぱいノックします。『絵に描いたような。』いつも落書きだらけのノートを提出する生徒が、現国教師に絵のモデルを頼んできます。真っ直ぐに見つめてくる生徒を意識し出した先生が可愛いです。『2/3の世界』図書館を舞台とした報われなかった片想いのお話。初版は2009年ですが、古さを感じない独特の世界観が楽しめます。
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