煙と蜜
」のレビュー

煙と蜜

長蔵ヒロコ

じんわりと心があたたかくなる優しい世界

ネタバレ
2022年6月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 30歳の将校と12歳のお嬢様。大正時代、まだまだ家同士の結びつきが強く、親の縁談で子供の未来が決まる世界の中で、お互いを思いやる優しいお話です。姫子のあどけなさ、仄かに抱いている恋心をちゃんと理解し、大人として時に導き、成長をあたたかく見守りながら慈しむ青年将校土屋がとても魅力的です。酸いも甘いも、地獄もきっと見てきた土屋にとって姫子の純粋さや一途さ、優しさは癒しになるとともに、大人になってそれらが身近な感情でなくなってしまった彼にとって姫子はそれらを思い出させてくれる大切な存在なのだと思います。一緒に暮らしている女中さんたちも個性が輝いていて物語を素敵に彩っています。当時の生活、人々の息遣いが感じられる世界観で夢中になれる作品です。
個人的に煙草のシーンがとても色っぽいと思います。見せ方がうまいと言いましょうか、こだわりを感じます。
私の祖父母も煙草を吸っていましたが、本当にあんな感じで「おいしくない」のに「おいしそう」に吸っていたんですよね。(幼少期の出来事ですが、不思議に思っていました)
くゆらせる煙もあんな感じで、そして堪能したのかうまそうに煙を出すのです。
懐かしい気持ちにもなりました。

今後の二人がこれからも楽しみです。
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