地下鉄の犬
」のレビュー

地下鉄の犬

草間さかえ

修復した器が手に馴染んでいくように…

ネタバレ
2022年6月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ このお話、めちゃくちゃ好きです!すごく好き〜。

居場所をなくした犬のように心が彷徨っている篠田さん。コーヒーの匂いにつられて入った骨董屋で朝倉と出会います。大切なものを上手く大切にすることができないと思っている篠田さんに、大切にしてできた傷は趣なんだよとの朝倉の言葉がすっと響いていきます。

壊れそうになった関係を一歩踏み出し修復した篠田さん、寂しがりやで少し恋に臆病な朝倉。不器用ながらもふたりの心が通じあっていく様子がとても好きです。

壊れた器を修復して大切に使うように、彷徨っていた心が落ち着ける場所を見つけ、ふたりのピースがあわさってゆっくりと馴染んでいく。そんな居心地のいい優しさを感じました。

可愛いの表現も、お弁当の真ん中の話も、大好きすぎて、胸がぎゅとします。

**割れたお皿を金継ぎして修復する。継いだ部分が味となって、世界にひとつだけのかけがえのないお皿になる。あぁ、そんな風にずっと大切にしていくのっていいなぁと以前ある番組を見て思ったんです。そんな気持ちも思い出せてさらに嬉しくなりました。
いいねしたユーザ11人
レビューをシェアしよう!