忘れた夏まで会いにいく
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忘れた夏まで会いにいく

梶ヶ谷ミチル

夏という魔法の季節に置いてきた初恋

ネタバレ
2022年6月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 小さな田舎町で親友が引っ越してしまった失意の小野大河は、中3になって東京から来た新任の町田先生が担任になります。親友の代わりにはならないと嘯いていた大河は、先生が子供の頃この町で育ったと知り親近感を覚えます。一緒に釣りに行ったり、学校で菜園を育てたりして夏を迎え、大河は花火大会の夜に寝ている先生にキスしてしまいます。大河は一直接に先生への想いを募らせてゆきますが、新学期になって先生が婚活を始めたと聞きます。問い質す大河に、先生は婚活を認め、キスなんて深い意味はないんだと大河を突き放すのでした。ショックを受けた大河は町から離れた高校の受験を決め、そのまま町を離れるのでした。先生への恋心を捨てる決意をした大河が、先生と彼女の側を自転車で通り過ぎるシーンが切ないです。そんな大河が6年ぶりに町に帰省します。花火大会の夜の空気は、大人になった大河を否応無く先生とキスしたあの夜に引き戻します。夏という季節の持つエネルギッシュさ、焦燥感、儚さとが絶妙な作品です。『誰にも言えない恋が咲く』こちらは10年ぶりに再会する従兄弟同士の恋のお話です。
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