グッドナイト、アイラブユー
」のレビュー

グッドナイト、アイラブユー

たらちねジョン

家族のカタチ

2022年6月23日
母の死から遺言に沿って、母の人生を旅するお話。
母の人生をなぞりながら、出会う人、血縁、友人と話をし、丸裸にされ、苦しみながらも成長してゆく主人公の大空にものすごく親近感がわきました。

少し自由な気風の母親、それを受け継ぐ兄、よくわからない父…。
一人ひとりと目の前からいなくなり、不安も寂しさも喉の奥にしまい込んで口を真一文字に結び必死に立っていた大空に大人は昔から勝手。
物語の途中で知り合った子とリンクします。
末っ子の私もずっとそんな疎外感を持って家族と接していた時期がありました。自分が知るのは大方の答えが出た最後だったり、一生懸命考えて出した答えに予想していましたみたいなしたり顔で応対されるとき、発する言葉の最後を持っていかれる。…孤独を感じるんですよね。
ほんとは全然孤独じゃないのにね。

作中、大空はそりゃそりゃド派手に大人たちに振り回されるんですよ。振り回されまくり!
怒れ大空!もっと大人にぶちまけろよ!
ぶちまけてぶちまけて、大事な家族に寂しい想いを何年もさせたんだってことを気づかせてやらなきゃ!!
って、ずっとずっと読みながら思っていました。
物語が進んでいくと、母の人生、兄の人生を想像して自分の未熟さにも気づき始めて一皮も二皮もむけて強くしなやかになっていきます。

父とね、どうやってかかわっていくんだろうと最後まで気がかりで…で、泣きました。

大人もさ人生初めてのことばかりで器用にはできないじゃない?
一人で立って一人で歩むけど、目線をあげれば手を伸ばせば繋がることが出来るし、温かいコーヒーを出してあげることもできる。
母は一人の人間の軌跡を知って欲しかったのかも知れないけど、大空のためにも自分が関わった人々を家族として手繰り寄せたかったんじゃないかなぁ。

先生の取材弾丸旅行が載っているんですが、わわ~!すごい辛い頑張る~!!って(笑)日程がタイト過ぎません?
でも、おかげで読者はヨーロッパに行ったような空気感を味わうことが出来ました。

すごく好きなお話です。
時間のある時に、じっくりじ~っくり読んでもらいたいです。
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