ゆきしろ、ばらべに―少年傑作集―
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ゆきしろ、ばらべに―少年傑作集―

鳩山郁子

閉じこめられたい

ネタバレ
2022年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ コンセプトBOXの作品と、描き下ろしなどからなる短編集。
表紙は若干入りづらい空気を醸し出していますが、少年傑作集という名がピッタリくる、美しさで溢れた1冊でした。

表紙の印象を良い意味で裏切ってくれた表題作『ゆきしろ、ばらべに』。
グリム童話をアレンジしたもの。
姉妹は少年に置き換えられ、鳩山先生が描くとこんなにも美しく生まれ変わるのかと驚かされました。

1話読んでは本を閉じ、日に1話ずつゆっくり読み進めました。
読み終えてなかなか現実世界に切り替えられない位酔ってしまうので、とても一気には読めませんでした。
読んでいる間は作品の延長の様な夢をよく見ていて、本当に寝起きは夢現でした。

どの作品も、その瞬間だけに宿る美しさというか。
二度と来ない瞬間を切り取った様な切なさが、美しくて。
少年という存在が、限られた時間を象徴している様で。
読み終えたら今手元にあったその世界は、時空のどこかに隠れてしまうような気になって、だから現実世界に帰りたくなくなったのかもしれません。

色々満たされてしまったというか、侵されてしまったというか。
しばらく鳩山先生の世界に籠もってしまいそうです。
メトロポリタン美術館の歌で、私も絵の中に閉じ込められたいなと思っていた気持ちを思い出しました。
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