スモークブルーの雨のち晴れ
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スモークブルーの雨のち晴れ

波真田かもめ

スモークブルーな人生を晴らす再会と恋

ネタバレ
2022年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ トップMRとして働いていた吾妻朔太郎は仕事を辞め、現在は無職で姉一家の居候となっています。ある夜、バーで見知らぬ男に薬を盛られお持ち帰りされるところをMR時代のライバル久慈静に助けられます。かつて吾妻とトップ争いしていた久慈は、8年前会社を辞めた送別会の夜に吾妻を抱き、翌朝黙って姿を消していました。閑静な住宅街の戸建に一人住む久慈は自宅で翻訳業をしており、吾妻に翻訳のバイトを持ちかけてきます。MRで基礎を叩き込んでいる吾妻に否やは無く、吾妻は久慈の家に通い始め、二人は静かな環境で少しずつ相手のことを知ってゆきます。翻訳の大家で大学教授だった父親を自宅で介護し看取った久慈、MRの激務に消耗し尽くし仕事を辞めざるを得なかった吾妻、二人とも日々積もるストレスで梅雨空のようなスモークブルーの中を生きてきたのでした。誇り高い久慈の父親が弱ってゆく様子と、それに対峙する息子としての久慈の姿がリアルで胸に迫ってきます。翻訳についても詳しく描かれていて興味深く読みました。スモークブルーな空を背負った二人が8年ぶりの再会で、輝くような明るい空を手に入れてゆく過程が丁寧に綴られるお話、次巻が楽しみです。
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