神さま、どうか手をとって
」のレビュー

神さま、どうか手をとって

ハルモト紺

歴史もの+オメガバース。ナイス着眼点!

2022年7月15日
特大ボリューム336ページ。
舞台は中世イングランド風。真面目に中世のことを調べて描かれた感じで、好感が持てます。
貴族の長男レオンと、買われてきたノエの、身分差ラブストーリー。次々と不幸が襲いかかってドラマチック、純粋な相手への気持ちで障害を乗り越えて結ばれる二人、王道でウルっとさせられます。タイトルもノエの心情と良く合っていて切なさが素敵。
また、読む際には、人類男女問わず全員出産可能という、ふゅーぷろ特有の設定である事を理解しておくとスムーズです。

主軸のストーリーも良いんですが、オメガバース設定の絡め方の上手さが面白いです。
第二性が何か解っていない時代という描き方のため、作中にはオメガバース用語が全く出て来ません。登場人物達は何が起きたのかがわかっていない中、読者だけが各所に描かれたオメガバース的展開の正体がわかるというのが、なるほどなるほど〜ってなって楽しかったです。Ωを得体の知れない「魔女」として、実際の歴史の魔女狩りに重ねてあるのが良く、避難所としての教会と教会の腐敗の絡め方も良かった。
そして「恋のおまじない」のロマンチックさよ。

脇のキャラクターも良く、下働きのトマスの利発になりきれない子供らしさとか、ノースランド卿の有能な悪女ぶりとか、とても好きです。役回りとしては非道な父親も、そうなるまでにコンプレックスやら何やら色々あったんだろうな、というのがチラ見えするのも良かった。

そして何と言っても弟のエリオットですよ!
兄への複雑な感情がもう、兄弟の関係性好きにはたまらない。兄と初めて会うタイミングがもっと違っていたら、と非常に切ないものがあります。
兄弟もの好きは、ぜひ二周目を。エリオットに感情移入して読む二周目は、私にとってはかなりの破壊力でした。最高。
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