女王の花
」のレビュー

女王の花

和泉かねよし

悲しいファンタジー

ネタバレ
2022年7月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 千年の花というおまじないは、薄星が亜姫に教えたもの。以来幸せになるために願いを叶える二人のおまじないになった。薄星は千年の花と叫びつつ闘い息絶えて、遺体は出てこなかった。亜姫もケシの花の薬で夢幻の世界をさ迷いつつ、千年の花に願いをかけた。願いが叶った時、亜姫が、薄星と別れた頃に若返ることを手で表した絵が見事。千年の花の咲く世界で待っていた薄星が迎えに来て、遺体も残さず亜姫はその世界に消え、やっと二人の恋が成就する。不遇な少年期、権謀術数の戦いに身を投じた少年期を共に過ごし、胡人の犬と呼ばれながらも最期まで恋人を護って逝った薄星と、彼を想い続ける女王としての孤独な亜姫で終わらず、最後にタイトルの千年の花の世界が描かれ、ファンタジーで終わって読者も救われる。その世界で身分の隔てなく恋が成就して固く結ばれた後、天国へと二人の魂が昇華されるのだろう。薄星が教えてくれた千年の花のおまじないを信じて、女王としてではなく、名声も何もなく、ただ薄星を愛した一人の女として、亜姫は旅立ちたかったのね。第一巻のト書きの意味がやっと最後に理解できた。薄星が迎えに来る時の花の香りや、随所に出てくる花びらの使い方も秀逸。なぜタイトルを千年の花にしなかったのか不思議だったけど、女王の花とは、女王から解放してくれる花と千年の花の両方を指していたのね。各巻のト書きで先を暗示していて、話の進め方も巧妙。主人公二人だけでなく、両親の敵だった人々も含めて登場人物全てが魅力的。中でも青徹が一番心に残るかな。で、女王の花を一気読みした後、青徹外伝も一気読み。どちらも、とても面白く楽しい作品でした。是非読んでみることをお勧めします❗
いいねしたユーザ10人
レビューをシェアしよう!