花降るふたり【電子限定おまけ付き】
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花降るふたり【電子限定おまけ付き】

ここのつヒロ

深く傷つき凍りついた心の鍵が解錠される時

ネタバレ
2022年7月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 営業部のエース水上瑛介は、かつて17歳で文壇に鮮烈デビューし、処女作にして唯一の作品を残し、今は普通の会社員として働いています。5年前、同期の新人•加久田慎一郎が水上を一目でその作者と見破り、水上の作品のファンであり、その作品のお陰で辛い高校時代を乗り切れたと告げ、それ以来真っ直ぐな好意を向けてきます。けれども水上の作品は実は盗作であり、水上はその過去に苦しみ、封印するようにして生きてきたのでした。加久田の存在に惹かれながらも忌まわしい過去に苦しむ水上、水上に夢と憧れを持ち続ける加久田に、職業小説家である水上の兄が加わりストーリーが進行してゆきます。偽悪的に振る舞う水上と真面目な加久田とのやりとりに「心のシャッター」「想いの鍵」という比喩が使われたり、二人の勤める会社が電子錠を扱っていたり、自然にテーマが浮き彫りにされてゆきます。最後は長い冬の時を終えて恋人となった二人に都会の満開の桜が降り注ぎます。
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