ここにしかいない二人【SS付き電子限定版】
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ここにしかいない二人【SS付き電子限定版】

加東セツコ

ちょっと不思議で乾いたSFファンタジー

ネタバレ
2022年7月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 津久井槙緒が帰宅すると見知らぬ男が家の中から現れます。自分の家の筈なのに違和感があるとその男•津久井顕成は言い、二人は家中を見て回って見覚えのない物があちこちにあることを確認します。とりあえず一緒に暮らさざるを得ず、二人はこの奇妙な状況を受け入れるのでした。お互いに干渉しないというルールの下、37歳の槙緒と29歳の顕成の同居が始まるのですが、顕成が時々夜中に泣いていることに気付いた槙緒は、ある夜泣いている顕成に思い切って声をかけます。やがてこの世界にはまだルールがあることがわかります。違う世界でずっと一人ぼっちだった同じ名字を持つ二人が「ここ」で繋がれる、静かでちょっと不思議なお話です。突然始まった生活は突然終わるかもしれない。当たり前の生活が決して当たり前でないことは、次の作品『籠』でさらに描かれます。牢獄らしき部屋で看守から何でもいいから思い出せと言われ続ける男の話は、囚われている男の記憶が全く無いことと、ひたすら白い独房の部屋とが高い視覚的効果をあげています。いずれも独特の世界観が静かな絵で淡々と描かれます。
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