グレイゾーン
」のレビュー

グレイゾーン

朝御飯丸

モヤっとする印象を鮮やかに残す怪作

ネタバレ
2022年8月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 単話で毎話毎話その後の展開が気になって気になって、どんどん引き込まれてしまい結局全話買って読んでしまいました。
が、最終話の終わり方よ…となんだか釈然とせず、描き下ろし読みたさにこちらも購入しました。

全体的に陰鬱とまではいかないけどモヤっとしたハッキリしないトーンでお話は進みます。
その中で攻めの創一がなんだか得体が知れず気味が悪い。
初めてのエッチもぬるっとした感じで最後までやっちゃう。
ていうか受けの晶がゲイでも無く好きな相手でもないのに抵抗もせず受け入れていくのも不気味です。
お話が進むに連れて不気味に感じた理由は解ってきます。
創一は、抑え続けた性の鬱屈が漏れて止まらなくなった。その鬱々とした欲望がヌルヌルした情動として伝わってきます。この表現は他で読んだことがなくとてもぞわぞわしました。
晶は、自分では打破できない閉塞感を他人任せで何とかできるかも、というズルさから身体を開いた。その性根は全編通して変わらず何の成長もありません。
本編最終ページで全く成長のない晶がダメ出しのように描かれています。ラストコマの笑顔で、本当にどーしよーもないヤツなーと思ってしまう。東京に出て来れたからと言って、性根がコレでは夢見てたキラキラは手に入らないのにと、側からは一目瞭然の体たらくです。ここがモヤっとポイントの頂点で、The end.。スッゴく印象に残りました。
これは小説では名作と呼ばれる作品でよく見ますが、BLとしては稀少だと思います。
描き下ろしを読んで、この釈然としない感想は釈然としないままで良かったのだと思えました。
本作がデビュー作の作家様でしょうか?この新しい才能に拍手を送りたい。そしてもっともっと読みたいと思います。

修正はスペシャル仕様で、単話の時よりも白短冊の数がグッと減っていました。
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