眠る兎
」のレビュー

眠る兎

木原音瀬/車折まゆ

好奇心は猫を殺す(誰も死なんけど)

ネタバレ
2022年9月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ いや〜面白かった。表題作「眠る兎」その後のお話「冬日」脇役の視点から「春の嵐」と3編あるのですが、そのどれにも、好奇心によってゲイ化する男が描かれています(言い方…)。みんなノンケだったのに…好奇心コワ…。「男同士で何で…」「理解不能…気持ち悪い…」とか言いながら、彼らは好奇心によって深淵を覗くのだ。

かつて男友達が言ってましたが、大概の男は「好き」って告白されると、相手のこと好きになっちゃうんですって。本作はもうこれの実証実験かなと思うくらい、作中の男たちが相手の好意に反応して、よろよろと吸い寄せられていく。「冬日」に登場する男なんか顕著で、相手の好意を知った途端鼻の下を伸ばして「キスとかしとく?」てな感じで、これだから男って奴はヨ…と苦笑いしてしまいました。

「春の嵐」で脇役柿本が、過去に27歳の男が10歳下の高校生と身体の関係を持ったことを、なんと自制心のない…と嫌悪して振り返るのですが、いやいや27歳なんてまだまだヒヨッコよ?突如嵐のように恋に落ちて、なりふり構わずバカなことしちゃう年齢よ実際…なんて、ついつい年寄り目線で肩を持ってしまったよね。というか年齢関係ないな、恋というものの荒々しさ、身勝手さがつぶさに描かれていて、そこが面白いのだと思います。

それよりも!高校生の里見の若さゆえの残酷さにドキドキし通しだったわ。もうすっごくこども。手に入れた綺麗な蝶をいじくりまわすかのごとく追い詰めて翻弄するので、やめろそんなんしたら死ぬわ!て震えました。
エチも、お話の流れ上仕方のない事とはいえ、乱暴に抱きいきなり突っ込むシーンが複数回あるので、たいそう痛そうで、攻めお前許さんぞ…と拳を握りました。前 戯大事。

「眠る兎」の二人が出会う時代には携帯電話も無く、「男同士、SEX」とか検索することも出来なくて、家に電話かけたりしてるのが、もどかしくもノスタルジックで、とても素敵でした。
それにしてもなぜ「里見浩一」という名前にした。作中でフルネームが出る度に里見浩太朗がよぎるので、ちょ…ヤメテ…て思いました。
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