このレビューはネタバレを含みます▼
ずっと以前に購入したものの、レビューが書けずにいました。
「月影」があまりに素晴らしく、先生と幸せになって欲しかったので、続編の「逃げ水」を読んだときは「こんなお話にするんだったら続編はいらなかった」とまで思ってしまいました。
時間を置いてから再読すると「あぁ、これは先生が望んでいた通りの清人の人生だ」と思え、それから2度3度と読み返すうちに、これで良かったと心から思えるようになりました。
妻子のある先生が借金をしてまで清人を身受けしていたら、奥さんや子供をきっと悲しませることになるし、そんなことになったら清人はいたたまれなかっただろう。
別れがあったからこそ、清人は愛し愛される人生を送り、家族を持ち、穏やかに旅立つことができた。
BLに置いて女性と結婚して幸せな家庭を築くことはタブーであるが、過酷な時代背景があり、清人が女性と所帯をもつことが自然な流れで描かれていた。
絶望し、死が迫っている中で思い出された先生の言葉。そばにいられなくても、心の支えとなり、生きる指針となっているのだろう。
最後のコマが、大好きな先生が来るのを待っていた子供時代の清人なのも素晴らしい。
「月影」と「逃げ水」でこのお値段で☆5の価値あり。他の作品はタダでついてきたおまけと考えると非常にお得な1冊。