残酷な神が支配する
」のレビュー

残酷な神が支配する

萩尾望都

名作!

ネタバレ
2022年10月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私にとって萩尾先生の作品の中でBEST1の文学的作品。昔雑誌掲載時内容に衝撃を受け、ジェルミが救われるのかハラハラしながら読んでいました。電子で買い久しぶりに読み返してみましたが、物語の構成といい、絵の美しさといい、先生の才能の凄さにひれ伏します。義父からの性的虐 待、義父と実母殺害という内容が重く、初回読んだときはジェルミに感情移入してしまいつらく作品の細部まで見る余裕が無かったため、二回目イアンに焦点あてイアンとジェルミの二人の関係性の変化に注目して読むと、萌え満載で物語の隅々まで楽しむことができました。英国の寄宿学校や上流階級の生活が見れたり、物語にシューベルトの歌、ポーの黒猫、イェイツの詩、ワルキューレのお話を入れてくる所も素敵だし、詩のようなフレーズ、芸術的な絵のカット、がいくつもあってしびれました。特に心象風景の描写が秀逸で、美しい表現方法もあれば仮面を使い義父の狂気、異常性、ゾクゾクした怖さを強調していました。物語の上で金髪長髪の美しく魅力的なイアンの存在が大きく、精神も体もタフなイアンじゃないと、罪の意識に悩み苦しみ堕ちる所まで堕ちてしまったジェルミを支えきることはできなかっただろうと思われます。義父はもちろんのこと、実母が知っていたのに知らないふりをしていた事が1番衝撃受けました。才能溢れる先生がなぜこの題材を選ばれたのか考えるのも面白いです。数々の残酷な出来事があったジェルミの魂をイアンの献身的な愛により救済、を描きたかったのかなぁなどと思案に暮れました。後世に残したい先生の才能溢れる名作です。
いいねしたユーザ20人
レビューをシェアしよう!