薔薇色じゃない
」のレビュー

薔薇色じゃない

凪良ゆう/奈良千春

行き先はいつも回り道だった。

ネタバレ
2022年11月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大変面白かったです。
かの有名な先生の作品の様にラブコメではなくぶっ飛んだキャラが闊歩するわけでもなく、普通の二人の人生が交差してすれ違い、また寄り添うまでの長い15年のお話でした。

阿久津と水野。
阿久津と言う男を八つ裂きにしたい気持ちになるくらいに久々のめり込みました。
与えよう、守ろうという意識した愛情はエゴなのでは。己が満足するだけのエゴなのではないか。その先に達成感があるならばなおさらだ。
と、阿久津を通して感じてしまった。
優しさの上に成り立っているとしても、本質を見誤ってしまっていては空回りするばかりなのだろう。
そんなことを考えながら読み進みましたが、はたして見返りを求めない愛情は成立するのであろうか…。
難しい…。

水野が受けた傷の深さに涙が止まりませんでした。
ストーリーのほぼすべてに水野の傷の深さがにじみ出て、最後にはより良い方向に向かうであろうと思いながらもチクチクとコチラの心を刺してきました。
阿久津という悲しみの根源から壁や溝をつくり分厚い鎧をまとった水野の一人立つ姿を思い浮かべ、ふたたび三度、阿久津を五右衛門風呂に放り込みました。

ほんと、薔薇色じゃない。
でも、薔薇色である必要はない。

今回も出会えてよかった作品でした。
いつも心を満たしてくれる作品を届けてくださって感謝です。
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