片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~
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片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~

乍藤和樹/佐賀崎しげる/鍋島テツヒロ

原作をうまく昇華させている傑作!!

ネタバレ
2022年12月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私もオッサンだから結婚圧力を受ける中年男の悲哀はわかるし(苦笑)、主人公ベリルの主観と周りの評価のギャップも面白い。同様のギャップ系作品も最近増えたものの、多くは主人公が強い理由がおざなりで物語も薄っぺらいが、この作品はベリルの資質+日々の鍛錬の積み重ねをきちんと描いている。また原作を程よく改変しているのも尚よし。(1)原作ベリルは後ろ向きな言動や卑屈な愚痴が多くて辟易するが、それを抑えて状況に流されつつも能動的に動く「不器用だが頑張る大人」に描くことで好感を持ちやすい。(2)ヒロインやライバルを含む登場人物の過去や心情を掘り下げることで、強さの理由や行動原理、ベリルに傾倒(恋慕/拝師)する経緯がわかりやすい。(3)敵対勢力も原作を下敷きに、個々の強さや組織の厚みを増すことで、対抗するベリル達と物語全体を引き立たせている。(4)多くの優れた弟子を育てた師範にしては異常ともいえるベリルの自己肯定感の無さも、乍藤先生なりの解釈を与えている。(5)戦闘シーンのスピーディさ重視の魅せ方がうまい。原作ベリルもアレはアレで味わいがあるので今後も目が離せない。……しかし仮にこれをアニメ化するなら、昔の時代劇並みに殺陣に力を入れねば、ヘナヘナ剣戟や止め絵ばかりの駄作(最近やたら多い)になりそうな気がする。
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